Genius is the recovery of childhood at will… |グッド・ウィル・ハンティング(1997)

Genius is the recovery of childhood at will… とはフランス、デカダンスの詩人、アルチュール・ランボーの言葉。久しぶりに映画「Good Will Hunting」を観て思い出した。ボードレールやピカソも同じような意味の言葉を残している。この映画、ガス・ヴァン・サント監督の中ではかなり爽やかな作品だ。「ラスト・デイズ」や「エレファント」のような暗さはない。初めて観たとき涙は出なかった。何年か経って2回目観たとき号泣した。

映画の終盤、カウンセリング最後の日、精神科医のショーン(Robin Williams)はウィル(Matt Damon)に、“It’s not your fault.”と繰り返す。最初拒絶していたウィルは次第に感極まり嗚咽しながら涙を流す。孤児で里親からの虐待を受けていたウィルはこのカウンセリングを通して今まで触れることを避けてきた傷に初めて向き合うことができたのだ。

子どもは言葉を操る方法は知らないけど、感じる心は大人と何も変わらない。その分、押し込められてしまった感情は大人になったときにはやっかいなものになっていたりする。虐待とまではいかなくても、子ども時代の痛みに向き合えることは大人になることの証。そこを抜きにして自分らしく生きてくことは難しい。ウィルの親友チャッキー(Ben Affleck)はそれを感覚的にわかっているからこそ、本当に自分の求める生き方ができるように、いつでも黙ってここから去って行っていいんだとウィルをけしかける。

この映画のメッセージは単に天才的な頭脳を持つウィルの心の成長を描くことではない。天才とは冒頭のランボーの一節のように、自らの意志によって過去を克服していける人のことではないか。自分を縛り付けているものに気付き、本当の生を獲得していくことの素晴らしさをこの映画は教えてくれる。その気付きは、早ければ早いにこしたことはないかもしれないけど、エリオット・スミスの曲が流れるエンディングを観ていると、まあ、それは人それぞれのペースでいいんじゃない、って思わせてくれる。

Good Will Hunting(1997)
Good_Will_Hunting
Directed by Gus Van Sant
Written by Ben Affleck Matt Damon
Starring Robin Williams, Matt Damon, Ben Affleck, Minnie Driver, Stellan Skarsgård
Release dates: December 5, 1997
Running time: 126 minutes
Country: United States
Language: English

Gus Van Sant’s death trip, “Last days” | ガス・ヴァン・サント「ラスト デイズ」

あくまでもカート・コバーンをモデルに、自殺する人間の最後の二日間を綴った映画「ラスト・デイズ」。あまりにも痛々しく孤独で惨めな姿は、とても見ていられないと感じる人もいるのではないかと思う。ちなみに、これより前に製作された「Gerry」、「Elepahnt」、「Last Days」をあわせて、Death Trilogy と呼ばれていて、どれも死にまつわる事件を題材にしています。

冒頭、森の中をパジャマ姿のブレイク(マイケル・ピット)が歩いていきます。監督はあるインタビューで、このシーンは社会人類学者ジェームズ・フレイザーの「金枝篇」(The Golden Bough)の始まりに似ていると話しています。カリスマ的にもてはやされたカート・コバーンを、殺された「森の王」と重ね合わせているのでしょうか。フレイザーがその大作で追究した原始宗教や神話、生け贄にまつわる儀式、慣習など、複雑な意味がこのシーンには織り込まれているようです。

この映画のモデルであるカート・コバーンのバンド、Nirvanaは承知の通り、サンスクリットの涅槃を意味する仏教用語です。煩悩の火を消して一切の悩みや束縛から脱した悟りの境地、釈迦の死を意味します。ブレイクの肉体から魂が抜け出る様子を示したかのようなエンディングを見ると、まるでカート・コバーンの死はあらかじめ予言されていたかのような運命性を感じさせます。

ブレイクという名前を付けているのは、英国の詩人ウィリアム・ブレイクを意識してのことでしょう。仏陀の像が置かれたリビングルームは、All Religions are OneというW・ブレイクの箴言を象徴しているようだし、何度も映し出される屋敷の扉は、The Doorsのバンド名の由来にもなった詩集、The Doors of Perceptionを思い出させます。

W・ブレイクは19世紀にイギリスで起こったfree love movementの先駆者とも看做されており、神秘主義的、宗教的な作風が強調されがちですが、当時では、とてもラディカルな思想の持ち主だったと言えるのでしょう。自らゲイであることを公表している監督は、それを表すシーンをこの映画でも織り込んでいて、晩年、人間性の復興を謳い、ルネサンスの萌芽となったダンテの「神曲」に傾倒したブレイクの思想をこの映画に散りばめているようです。

It might be nice to eventually start playing acoustic guitar and be sort of
a singer and song writer rather than grunge rocker, you know, because then I might be able to take advantage of that when I’m older and sit down on a chair and play acoustic guitar like a Johnny Cash or something…
(Nirvana interview on Metal Express in 1994)

これはカート・コバーンが死ぬ8ヶ月前のインタビューからの抜粋です。

自殺の善悪についての云々はもはやどうでもよく、ただ、カート・コバーンがもし生き存えていたら、あの、MTVアンプラグドのようなアコースティックライブをリアルタイムで聴けたかもしれない、そんなことをふと思ってしまうのです。

Last Days(2005)

Directed by Gus Van Sant
Written by Gus Van Sant
Starring Michael Pitt, Lukas Haas, Asia Argento, Scott Patrick Green, Nicole Vicius, Thadeus A. Thomas
Release date(s): July 22, 2005
Running time: 97 minutes
Country: United States
Language: English

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Scott Smith, Harvey Milk’s “widow” |「MILKミルク」(2008)

This was the second time to watch this movie and impressed me somewhat differently.

Personally, the most interesting part of this movie was that the relationship between Harvey Milk and Scott Smith. James Franco, who played Scott Smith, was not sure why there’s so little footage of Smith and so little known about Harvey’s former lover.

“It is weird because after Harvey was killed Scott was like the main torchbearer of Harvey’s memory. He was even called ‘the Widow Milk’ even though they were broken up when Harvey died.” (http://movies.about.com/od/milk/a/james-franco.htm)

I think Scott gave him the push Harvey needed. Harvey was unsatisfied with his life and wanted to make a change so they decided to move to San Francisco together. It’s no exaggeration to say that he would not be accomplished his goal without Scott Smith.

Toward the end of the movie, Harvey made a phone call to Scott and they talked in the dim light of dawn quietly for a while, which was sweet moment and loved that scene in this film.

MILK(2008)
Directed by Gus Van Sant
Written by Dustin Lance Black
Starring Sean Penn, James Franco, Emile Hirsch, Josh Brolin, Diego Luna
Country: US
Language: English
Color: Black and white, Color
Running time: 128 minutes

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