Genius is the recovery of childhood at will… とはフランス、デカダンスの詩人、アルチュール・ランボーの言葉。久しぶりに映画「Good Will Hunting」を観て思い出した。ボードレールやピカソも同じような意味の言葉を残している。この映画、ガス・ヴァン・サント監督の中ではかなり爽やかな作品だ。「ラスト・デイズ」や「エレファント」のような暗さはない。初めて観たとき涙は出なかった。何年か経って2回目観たとき号泣した。
映画の終盤、カウンセリング最後の日、精神科医のショーン(Robin Williams)はウィル(Matt Damon)に、“It’s not your fault.”と繰り返す。最初拒絶していたウィルは次第に感極まり嗚咽しながら涙を流す。孤児で里親からの虐待を受けていたウィルはこのカウンセリングを通して今まで触れることを避けてきた傷に初めて向き合うことができたのだ。
子どもは言葉を操る方法は知らないけど、感じる心は大人と何も変わらない。その分、押し込められてしまった感情は大人になったときにはやっかいなものになっていたりする。虐待とまではいかなくても、子ども時代の痛みに向き合えることは大人になることの証。そこを抜きにして自分らしく生きてくことは難しい。ウィルの親友チャッキー(Ben Affleck)はそれを感覚的にわかっているからこそ、本当に自分の求める生き方ができるように、いつでも黙ってここから去って行っていいんだとウィルをけしかける。
この映画のメッセージは単に天才的な頭脳を持つウィルの心の成長を描くことではない。天才とは冒頭のランボーの一節のように、自らの意志によって過去を克服していける人のことではないか。自分を縛り付けているものに気付き、本当の生を獲得していくことの素晴らしさをこの映画は教えてくれる。その気付きは、早ければ早いにこしたことはないかもしれないけど、エリオット・スミスの曲が流れるエンディングを観ていると、まあ、それは人それぞれのペースでいいんじゃない、って思わせてくれる。
Good Will Hunting(1997)
Directed by Gus Van Sant
Written by Ben Affleck Matt Damon
Starring Robin Williams, Matt Damon, Ben Affleck, Minnie Driver, Stellan Skarsgård
Release dates: December 5, 1997
Running time: 126 minutes
Country: United States
Language: English